彼の腕の中には、妻と娘がいた。 触覚……これも人が持つ五感の一つ。だが、この時ばかりはこの感覚が不要だと、そう感じた。 この感覚のおかげで、妻と娘がすでに動かない存在である、そのことを理解することになったのだから。 そして…… 「う、う、うわああああああああ」 彼の中で何かが壊れた。 気が付くと異質者は目と鼻の先にいた。 体が、また衝撃に包まれ、はじけ飛んだ。 味覚、触覚がまだ生きていることを認識はさせた。だが、無事な状態ではなかった。 彼は意識が遠のいていくのを感じた。 そして……