緒方は影をじっと見据えたまま、動かない。 影もまた動かなかった。 曖昧な「におい」だけがこの部屋を支配する。 沈黙を破り、緒方が言葉を発する。 「わかりました、その依頼お受けいたします」 「あぁ……ありがとうございます」 影が胸を撫で下ろし、音を発した。 その直後、緒方の周囲の空気が大きく揺らめく。 影が音を発した。